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特別企画

働く女性? 専業主婦? 「恋愛しない若者たち」

国立社会保障・人口問題研究所に聞く「現代の若者の恋愛と結婚」とは?

4月から、いわゆる「女性活躍推進法」が施行されました。
先日の報道でも、将来、課長など「中間管理職以上」を目指すと答えた新入社員の女性は、なんと53%もいた、とのこと(16年 明治安田生命調べ)。これは、4年連続の増加だそうです。

一方で、「専業主婦願望」が強いとも言われる20代女性。複数の民間調査でも、3~4割前後は「専業主婦に(なれるなら)なりたい」と答えています。
いったいホンネはどちらにあるのか。そして、現代の若者の恋愛や結婚観、働き方とは?

……人口や経済、社会保障の観点から、結婚と出産、それに伴う働き方についても経年調査を続ける、国立社会保障・人口問題研究所の森田朗所長と、金子隆一副所長、釜野さおりさん(人口動向研究部)に、私・牛窪がお話を伺いました。

女性の社会進出と「専業主婦」願望

――まず、そちらで実施した「結婚と出産」に関する直近の調査は、「第14回 出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」(2010年)と見て間違いないですか?

金子(以下、敬称略):はい。同調査は国勢調査と同じく5年に一度なので、いま最新の調査結果を集計中で、今秋に最新の報告が出せると思います。

――その第14回調査を見ると、女性が理想、あるいは予定するライフコースに、大きな経年変化が見られますね。とくに90年代以降、「専業主婦」コースの増減が顕著かと思うのですが。


金子:仰るとおり、女性(18~34歳)の間で「理想」コースに専業主婦を選ぶ女性は、92年(第10回調査)までは約3人に1人もいました。
ところが97年(第11回調査)には、この割合が1割以上も減った。替わってこの頃「理想」で1割近く増えたのが、「(結婚・出産と仕事の)両立」コースです。

――やはり87年の「(男女雇用機会)均等法」施行以降、少しずつ女性の社会進出が進んだからでしょうか。

釜野:正確には、社会進出の「気運」が高まったから、だと思います。というのも、理想はそうでも現実に近い「予定」コースはといえば、同じく両立コースの上昇が目立ち始めたのが、05年(第13回調査)に入ってからなんです。

もう一つ、同じ時期に顕在化したのは、「適齢期」に関するこだわりの変化です。87年(第9回調査)に、「ある程度の年齢までには結婚するつもり」の回答は、男性で6割、女性でも54%いました。
ところが、92年にはそれぞれ同5割超、5割弱まで落ち込み、02年には女性で44%にまで減りました。

――つまり、「29歳までに」「30歳までに」といった適齢期へのこだわりが、一旦緩んだと?

釜野:そうです。この辺りも、その後に続く女性の社会進出や「おひとり様ブーム」、あるいは結婚離れにも繋がる流れだったかと思います。

――一方で、05年以降は先ほどの「ある程度の年齢までには~」が再び上昇に転じていますね。とくに女性では、10年調査で6割弱にまで伸びていますが、この辺りをどう見ますか?
やはり「妊活」ブームなど、昨今の「妊娠適齢期」とも関係がある?

釜野: おそらく一つは、そうだと思います。いつかは子どもが欲しい、でも最近、「出産には結婚以上に適齢期がある」と報じられているので、「ならばその前に結婚を」と(逆算して)結婚年齢にこだわるようになった。

ただもう一つ、「家族仲の良さ」とも無縁ではないと思います。今の若い世代は、総じて自分も親と仲がいい。家族を肯定的に捉える傾向も強いので、「自分も親世代のように、子どもや家族が欲しい」と、家族願望を抱きやすいのではないでしょうか。

「親ラブ族」は結婚しにくい?

――確かに、いまの20~30代は男女ともに親と仲がいい。複数の民間調査で、「パパやママのことが大好き」の回答は、7~8割にものぼります。
私は彼らを「親ラブ族」と呼んでいて、過去にはある住宅メーカー(積水ハウス)と、「仲良し母娘」をターゲットにした住まいを開発した経験もあるのですが……。

ただ、2年間かけて400人の母娘に調査、取材したところ、親と仲が良いがために「無理に結婚してまで家を出たくない」と考えてもいる。この辺りはいかがでしょう?

釜野: 明確に、親との「同居割合」と恋愛・結婚との相関を見てはいないのですが、親と同居する未婚者の割合は、男女とも97年以降、多少の増減はあれどほぼ全年代で「微増」傾向に。とくに30~34歳では、男性が10年に74.4%に、同女性で80.3%にも達しました。

そもそも未婚自体の割合も年々上昇傾向ですから、親との距離感が昔以上に近しい男女が増えているのは、間違いないでしょう。

森田:親との関係性や親密性が強くなった背景には、近年、少子化で子どもの数自体が減った影響もあるでしょう。

ちなみに、長年「一人っ子政策」を続けてきた中国でも、やはり親と子の親密性が話題になっています。親も、わが子が20代の頃は、「まだ結婚しなくていい」と考えやすいのですが、30代になると「そろそろ結婚しないの?」と態度を変える。それだけ、都市部を中心に、未婚率の上昇が顕著になったからでしょう(※)。

※同志社大学大学院・厳善平教授の「中国における少子高齢化とその社会経済への影響」(www.jri.co.jp/file/report/jrireview/pdf/6642.pdf)によると、2010年での人口センサスに基づいた30歳における性別・男女別の未婚率は、男性で18.1%、8.8%。さらに都市の未婚率に限ると、男女平均で16.2%にも及ぶ。

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